冬季におけるエラブオオコウモリの観察で新たな発見

イーラボでは、エラブの希少動植物の保全の一環として、エラブオオコウモリの調査にも取り組んでいます。
令和5年度は、環境省に推薦を頂き、GGG(公益社団法人ゴルフ緑化促進会)国立・国定公園支援事業を受託し、
冬季におけるエラブオオコウモリの活動調査を行いました。

これまでの観察は、コウモリがワシントンヤシに集団で飛来する夏季が主であり、
冬季は単体で行動することが多く、また定点での観察が稀でした。

そこで、冬季におけるコウモリの生態調査を継続的に行いました。


また、調査をより有意義なものにするため
コウモリ観察に必要な道具の一部を補助金から購入させていただきました。

 

ペリット(食痕)の観察

コウモリが飛来したかどうかを判断するものの1つとして、ペリット(食痕)があります。

コウモリは果実をそのまま飲み込むのではなく、
咀嚼して果汁だけを飲み込み、残った食べかすを吐き出します。それがペリットです。
木の下にペリットがある事が、コウモリが飛来した(その木で食事をした)証拠となるのです。

前田集落に、モクタチバナの木がたくさん生えている場所があります。
モクタチバナは冬に実をつける木で、冬季におけるコウモリの貴重な食糧であることが確認されています。
そこで2024年1月から定期的に木の下で観測を続けました。

結果、前田の観測地点に飛来するコウモリはごく少数なのではないかと感じました。

というのも、コウモリが飛来した正確な日を特定するため
ペリットの個数を確認したあとは木の下をきれいに掃き掃除するのですが、
(掃除後に新たなペリットが落ちていれば、その日の夜に飛来したと特定できる)
その方法で観察する限りでは、数日おきにぽつぽつと数個だけ落ちている…という結果となりました。

モクタチバナの実は枝が垂れるほど鈴なりだったので
多くのコウモリが食事に来てもおかしくないと思っていたのですが、
実のつき具合に対してペリットはかなり少ない印象でした。

食事の場所は個体によってある程度決まっているのか、
それとも単にモクタチバナの実が美味しくないのか…気になりますね!
(美味しくないかどうかはコウモリに聞いてみないと分かりませんが、、、笑)


前田と並行して、本村集落から西之湯へ向かう道中のシマグワの木の下でもペリットを観察しました。

冬季で果実が少ない時期には、こうして木の葉や樹皮などをかじることもあるそうです。
ここでもモクタチバナ同様、ぽつぽつと数日おきに確認できたのみで
多くのコウモリが頻繁に飛来しているとは言えない状況でした。

2月下旬 湯向集落での観察

大きな発見があったのは2月の下旬。
湯向集落近くの1本の木に10頭ほどのコウモリがひしめくように留まっているのを発見しました。

日没を待ち、辺りがうっすらとしか見えなくなる程度の暗さになった頃(18:30〜)、
コウモリの飛来を確認しました。

メガ崎方面の山の方から、地図上の「杉の木」に一度留まり、
そこからアコウの木上空へとコウモリが集まり始めました。

今まで冬季に見かけるコウモリはいずれも単体か多くても2頭で、鳴き声をあげることもありませんでした。
多くの場合、ワシントンヤシに飛来しても上空をくるくると回りそのまま去っていくか
ごく短時間だけ木に留まり、すぐ飛び去っていくというのが通例。

しかし、この時のコウモリは次々と一本の木に集まり、
木に留まっている10頭に加えて常に上空にも5頭ほどが飛び回っている状況が1時間ほど続きました。
大きな声で鳴いている個体も数頭おり、
今まで観察してきた冬季のコウモリとはまるで違う生態に、参加者一同驚きの連続でした。

さらに不思議な点は、普段は「アコウの木」へと集まるコウモリが、
この時はその横にある葉の落ちた木に集まっていたという事でした。

木には花の蕾がついていましたが、蕾を食べる様子はなく、
ただぶら下がって揺れている個体や、キィキィと鳴きながら他のコウモリにちょっかいを出すような仕草をする個体が見られました。
この行動には一体どういう意味があるのか…この集会の目的は何なのか。
驚きと謎が深まるばかりでした。


この日の観察会は、日没間近の18時半から20時までの約1時間半でした。
今後もコウモリ観察を続け、新たな生態を記録するための活動をおこなって行こうと思います。



2024.6.9.
 

上部へスクロール